「日本はキャッシュレス決済の普及が遅れている」「海外はキャッシュレス化が進んでいる」という声をよく聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
本記事では、日本におけるキャッシュレス決済の現状と今後についてお伝えします。これから導入する際の注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
キャッシュレス決済は、日本以上に海外で普及しています。最初は、日本や世界のキャッシュレス決済比率についてご紹介します。
日本のキャッシュレス決済比率は、海外に比べると低いといわれています。
実際の調査によると、2020年時点で29.8%となっており、世界各国に比べると低い数字です。キャッシュレス決済手段別の割合を見るとクレジットカードが85.3%、デビットカードが2.8%、電子マネーが6.3%、QRコード決済が5.6%(2021年)となっています。
【出典】一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ 2022」
先の調査によると、アメリカのキャッシュレス決済比率は55.8%。日本より普及しているのはもちろん、デビットカードが広く利用されているのが特徴です。
広大な土地を有するアメリカでは、ATMを探して現金を下ろす手間を省くために、クレジットカードやデビットカードの利用者が増えているようです。
韓国は、世界でも有数のキャッシュレス大国です。韓国のキャッシュレス決済の普及率は、2020年時点で93.6%となっており、世界の主要国のなかでもトップクラスの数字を記録しています。
韓国では、キャッシュレス決済を推進するために、企業への導入義務化や消費者への特典などを設けているのが特徴です。
スウェーデンのキャッシュレス比率は、46.3%となっています。北欧は降雪量が多く、現金を輸送するコストが高くなりやすいことから、スウェーデンに限らずキャッシュレス化が進んでいます。
日本のキャッシュレス決済比率は、コロナ禍でも例年と比べて大きな増加を見せていません。上記のように、諸外国と比べて日本のキャッシュレス化が遅れている理由はどこにあるのでしょうか。
日本のキャッシュレス化の遅れについて、よく挙げられるのが現金志向の強さです。日本は、高度経済成長を経て世界でも有数の経済大国となっており、諸外国に比べて国民の現金に対する信頼が高いといわれています。
その結果、キャッシュレス化の流れに乗り遅れ、世界に比べてキャッシュレス決済比率が低くなっていると考えられます。
次は、セキュリティ面への不安です。
例えばクレジットカード決済の場合、スキミングや不正利用の被害などがニュースになるケースもあり、不安を感じてクレジットカードそのものを作らないという方も少なくありません。
キャッシュレス決済を導入する事業者から見ると、手数料の課題が大きいといえます。料金体系はサービスごとに異なるものの、キャッシュレス決済の導入には専用端末の設置費用や月額料金、決済手数料などが発生します。
現金と比べてコスト負担が増大するため、売上などを考慮すると「導入したくてもできない」店舗も少なくありません。また、クレジットカード利用時の手数料も、日本は欧米と比べて高いといわれています。
支払い方法の細分化もキャッシュレスの推進を妨げている要因の一つです。
例えばQRコード決済を導入する場合、「LINE Pay」「PayPay」「楽天ペイ」「au PAY」などさまざまな種類があり、事業者はどのサービスに対応すべきか迷ってしまうことがあります。 中国では「Alipay」「WeChat Pay」の2つのサービスが台頭しており、事業者側も導入しやすい傾向にあります。
上記のような理由から、日本では依然としてキャッシュレス決済の導入が進んでいないと考えられるでしょう。
日本のキャッシュレス化は世界に比べて遅れているものの、今後の伸びしろは十分にあるといわれています。こちらでは、今後もキャッシュレス決済の導入がさらに進むとされる理由を解説します。
経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に引き上げることを目標としています。そして、将来的には80%を目指すとしており、日本政府が推進していることがわかります。
今後もさまざまな政策を打ち出す可能性があるため、キャッシュレス決済はさらに普及していくでしょう。
出典:経済産業省「キャッシュレス社会への取組み」
近年では、現金の取り扱いに関するコストが増大しています。
例えば、金融機関におけるATMの出金手数料、紙の通帳の有料化などが代表的です。キャッシュレス決済の導入はお金がかかるイメージがありますが、現金の管理にもコストがかかります。
キャッシュレス決済は手数料負担を抑えたサービスも登場しているため、今後多くの事業者が導入すると考えられます。
新型コロナウイルスの流行もあり、決済シーンにおいても非接触の需要が高まっています。そのため、現金に触れることなく支払いを終えられるキャッシュレス決済は、事業者と顧客の双方にメリットがあります。
業界によっては、海外からの観光客をどれだけ獲得できるかが企業の成長に大きく影響します。先に挙げた通り、諸外国は日本よりキャッシュレス決済が普及しているため、インバウンド需要を獲得するにはキャッシュレス化が欠かせません。
今後は、外国人を相手にビジネスを展開する事業者ほど、キャッシュレス決済の導入を進めていくでしょう。
上記のような要素を踏まえると、現在現金決済のみに対応している事業者は、キャッシュレス決済の導入を検討するのがおすすめです。
これからの時代に利用者からの評価を勝ち取るには、キャッシュレス決済の導入がおすすめです。最後に、今後キャッシュレス決済を導入するにあたり、注意するべきポイントを解説します。
前述の通り、キャッシュレス決済にはさまざまな種類があり、年代や生活の状況に応じて何をメインに利用しているかが変わります。そのため、店舗にキャッシュレス決済を導入する場合は、利用客の主な決済手段を事前に調査し、最適な種類を導入することが大切です。
例えば、学生など若者が中心のお店では、クレジットカードよりスマートフォンで支払える決済方法が優先されるかもしれません。
キャッシュレス決済の導入における資金繰りを懸念している場合は、入金までのサイクルが短いサービスを選ぶのがおすすめです。
例えば、売上が発生した翌日に入金されるサービスや、月に複数回入金の機会があるサービスであれば、資金繰りがシビアな店舗でも導入しやすくなります。
キャッシュレス決済と現金決済では、会計時のオペレーションが変わってくるため、初めてキャッシュレスを導入する際はスタッフ向けの研修が必須です。
また、災害や通信障害が発生した場合、キャッシュレス決済は利用できなくなる可能性があります。緊急時のオペレーションについても確認しておきましょう。
キャッシュレス決済の導入でコスト面に不安を感じている場合は、事前に予算を決めておきましょう。そのほかには、初期費用が無料のサービスや国の助成金制度を活用することで、コストを抑えてキャッシュレス化を進められます。
日本のキャッシュレス決済の導入率は世界に比べると低いものの、ニーズは確実に増加しており、今後さらに普及していくと考えられます。
将来的には、キャッシュレス決済の有無が集客に影響する可能性もあるため、早い段階でキャッシュレス化を進めておくのが効率的です。この機会にぜひ一度ご検討ください。
参考記事:「キャッシュレス決済の導入メリットとデメリット、設置の流れを解説」
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