人件費の削減や新型コロナ対策などを目的として、業務の機械化や自動化を進めるスーパーマーケットが増えています。中でも人気が高いのが、導入しやすく多くのメリットが期待できるセルフレジの設置です。
そこで今回は、セルフレジの概要やスーパーのセルフレジ普及率、スーパーに設置するメリット・デメリット、導入にかかる費用・注意点を解説します。
スーパーや飲食店など、さまざまな店舗で見かける機会の増えたセルフレジ。ここでは、セルフレジの仕組みや使い方、設置率について解説します。
セルフレジには、以下の3つの種類があります。
無人レジとも呼ばれており、会計業務における商品バーコードの読み取りから袋詰めまでの工程のすべてを利用者自身が行うタイプのセルフレジです。また、券売機もこのタイプに当てはまります。
会計業務のうち、商品バーコードの読み取りまでをスタッフが行い、決済や袋詰めは利用者が行うタイプのセルフレジです。
完全な無人店舗を実現するためのセルフレジです。入店時に事前認証をすることで、店内に設置されたカメラで購入した商品が認識され、自動決済される仕組みとなっています。
セルフレジの種類の詳細は、以下の記事をご覧ください。
スーパーにおけるセルフレジ機の設置店舗は、年々増加しています。『2022年版スーパーマーケット白書』によると、2018年から2021年の間に設置率の増加が顕著になっているのがわかります。
2021年
セルフレジ設置率 約11.6% 約23.5%
セミセルフレジ設置率 約48.9% 約72.2%
(出典:『2022年版スーパーマーケット白書』全国スーパーマーケット協会)
セルフレジの導入は、店舗側の業務効率化というメリットだけでなく、顧客側から見ても利便性の向上というメリットがあるため、今後もセルフレジ普及率は向上していくでしょう。 セルフレジについてはこちらの記事でも解説しています。
セルフレジの概要を紹介しましたが、どのように使用すれば良いのでしょうか。ここでは、セルフレジの仕組みと店舗での使い方を解説します。
セルフレジは、どのような仕組みで稼働し、顧客自身が会計作業を行うことができるのでしょうか。ここでは、2つの仕組みについて紹介します。
●商品情報を読み取る機器:スキャナ
スキャナには、商品情報を、バーコードスキャンにより主動で読み取るタイプと、ICタグにより自動で読み取るタイプの2種類があります。 バーコードで読み取るタイプは、スーパーやコンビニなどの小売店で導入が進められており、ICタグで読み取るタイプは、REIDと呼ばれる技術を用いており、アパレル業などで導入されています。
●会計操作を操作する画面
顧客自身が会計操作を行うことが意図されているUIとなっているため、表示されているとおりに画面をタッチするだけで決済が可能です。年配者など、機器の使用に不慣れな方でも利用できるように工夫されています。バーコード決済などのキャッシュレス決済にも対応できるため、セルフレジ決済の利便性は高く、消費者の満足度向上も期待できるでしょう。
セルフレジの使用方法は、レジの種類によって変わります。
●フルセルフレジ
自動精算機を設置し、先ほど挙げたレジ作業のすべてを利用客が行います。レジ横に買い物かごを置き、決済端末でバーコードを読み込んで決済や袋詰めを行う形です。
●セミセルフレジ
バーコードの読み取りは店員が行い、精算機での支払い作業をお客様に行ってもらいます。レジ本体と精算機が別々に設置されているのが、セミセルフレジの特徴です。お酒・たばこなどの年齢確認が必要な商品や、スタッフの対応が必要な商品などがある場合にはセミセルフレジが向いています。
また、他にも有人レジとセルフレジのどちらも設置することで、顧客の利便性を損ねないように工夫し、顧客満足度の向上につなげている企業も多くあります。
スーパーにおけるセルフレジの導入メリットには、どのようなものがあるのでしょうか。次は、セルフレジ導入がスーパーにもたらすメリットを解説します。
セルフレジではレジ作業の一部を顧客自身に行ってもらえるため、回転率が向上し、レジ前の行列解消が期待できます。特にセミセルフレジでは、時間のかかりやすい部分である商品スキャンは店員、比較的簡単な操作である会計作業は利用客といった形で分担でき、より高い効果が見込めます。
セルフレジを導入することで店内に配置する人員を減らせるため、人件費の削減につながるのもメリットです。特にフルセルフレジを設置する場合は、レジの付近に利用客をサポートする店員を数人配置するだけでレジ業務を回せます。
削減したコストや人員は、販促活動やマーケティング活動に利用することで、利益率のアップも見込めるでしょう。レジの業務効率化や店舗の人件費にお悩みの場合は、セルフレジの導入がおすすめです。
現在流通しているセルフレジの多くは、キャッシュレス決済に対応しています。そのため、セルフレジを導入することでクレジットカードはもちろん、スマホ決済や電子マネーなどの決済手段に対応できるのもメリットです。
日本のキャッシュレスの普及率は、世界各国と比較すると高くないものの、現金決済を使用しない世代も増えています。セルフレジの設置によって幅広い決済方法に対応できれば、今まで店舗を利用していなかった層への訴求にもつながります。
キャッシュレス決済に関して下記で詳しく解説しています。
関連記事:キャッシュレス決済の導入メリットとデメリット、設置の流れを解説
セルフレジを導入すると、レジ担当者はお金の計算を行う必要がなくなるため、精算ミスを防止できます。会計時に多くの紙幣や硬貨を扱う場合でも、精算機に投入するだけで金額を確認でき、適正なお釣りを返却できます。
また、2020年に始まったレジ袋有料化にも簡単に対応できるため、精算ミスが減り、レジ締め作業をスムーズに終えられるでしょう。
セルフレジは、利用客と店舗スタッフの接触を減らせるのもメリットです。衛生面に配慮した店舗運営を実現でき、コロナ禍で高まった感染症対策への接客ニーズに応えられます。顧客の印象アップにつながり、安心して利用してもらえるようになるでしょう。
このように、スーパーにセルフレジを導入することで、店舗が抱えるさまざまな課題の解決に役立ちます。
スーパーにセルフレジを導入するデメリットを解説します。デメリットも考慮したうえで導入しましょう。
セルフレジを導入するには、機器の導入費用がかかります。それだけでなく月々のシステム利用料や保守費用がランニングコストとして必要です。
どれくらいの費用がかかるのかについては、のちほど詳しく解説しますが、しっかりと予算を確保することが求められます。
セルフレジの導入により、レジスタッフに新たなオペレーションを用意することが必要です。接客マニュアルや万引き・不正行為があった際の対応方法、セルフレジが故障した際の対応方法など、現場が混乱しないように準備することが求められます。
そのため、導入を決めてから導入後、スタッフや利用客がセルフレジに慣れるまでの間は、手間や労力がかかる場合があります。
従来の有人レジに比べてセルフレジは大きいため、設置スペースが必要です。また、利用客が自分で作業しやすいように、荷物を置けたり、袋詰めできたりするスペースを用意した方が利便性を向上させられます。
そのため、小規模店舗の場合には、セルフレジが不向きな場合もあります。導入前に、利便性を高めるための導線やレイアウトを検討しましょう。
セルフレジの導入にかかる費用には、導入時にかかる初期費用と導入後のランニングコストがかかります。それぞれPOSレジ提供メーカーによりプランが異なるため、目安として参考にしてください。
●初期費用
フルセルフレジ:1台約100万~300万円
セミセルフレジ:1台約100万~400万円
セミセルフレジは登録機と自動釣銭機を購入する必要があり、高額になることが一般的です。
●保守費用:月額2万円程度~10万円程度
サポート内容により保守費用は異なるため、希望するメンテナンス・保守があるかどうかを見極めて契約することがおすすめです。
●POSシステム月額利用料:月額0~数万円程度
利用する機能やアイテム数、オプションを追加することで価格は変わるため、本当に自店舗に必要かどうかを検討したうえで導入しましょう。
セルフレジの価格や抑える方法については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:セルフレジの価格はどれくらい?コストを抑える方法についても解説
費用を抑えるために、補助金を利用する企業もあります。補助金申請をサポートしてくれるPOSレジメーカーもあるため、費用にお悩みの企業は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【2023最新】セルフレジ・自動精算機導入に活用したい補助金・助成金まとめ!
セルフレジの設置はメリットも多いものの、いくつかの課題もあります。ここでは、スーパーにセルフレジを導入する際に押さえておくべきポイントを解説します。
セルフレジの導入には、一定の費用が必要です。本体を購入する場合は、初期費用に加えてメンテナンス費用などがかかるケースもあります。購入せずにレンタルやリースをする場合は、初期費用を大きく抑えられるものの、毎月のランニングコストがかかります。予算を考慮して導入方法を決定しましょう。
セルフレジではレジ操作の一部をお客様に任せるため、セキュリティ対策も欠かせません。例えば、万引きや未払い、なども事例も報告されています。セルフレジを導入する際は、併せてトラブル発生時の従業員教育、防犯カメラやアラームの設置などセキュリティ対策も万全にしておきましょう。
セルフレジによくあるトラブルとその対策の詳細は、以下の記事をご覧ください。
セルフレジを導入する際、設置スペースが問題となるケースもあります。セルフレジは、一般的な有人レジと比較すると省スペースの製品も多いものの、バーコードの読み取りや決済を行うため、ある程度の空間が必要です。セミセルフレジをレイアウトする場合は、圧迫感が出ないように工夫すると良いでしょう。
有人レジからセルフレジに切り替えた場合は、使用方法の説明やサポートをするためのスタッフを配置しましょう。特にスーパーの場合、高齢の利用者も多いため、セルフレジを使い慣れていない可能性が考えられます。サポートが不十分だと不親切なお店として認識され、シニア層を中心に顧客の離脱につながるおそれがあります。
上記のポイントを押さえておくと、セルフレジをスムーズに導入でき店舗運営の効率化につながります。
セルフレジはその利便性の高さから、全国のスーパーで導入が進んでいます。最後に、セルフレジの導入店舗の例をご紹介します。
首都圏と近畿圏を中心に店舗を構えるスーパーの「ライフ」では、レジ前の行列の解消や精算ミスの防止などを目的として、セルフレジが導入されています。これにより、夕方や土日などの利用客が多い時間帯でもスピーディーなレジ作業が実現し、回転率の向上に役立っています。
また、以前はライフアプリの利用が有人レジに限られていましたが、2021年7月にセルフレジでも対応し、アプリを利用する方も非接触型決済が可能になりました。
福島県を中心に展開する地域密着型スーパーの「いちい」では、一部の店舗でセミセルフタイプのレジを設置しています。レジ待ち時間の短縮が目的で、商品情報の登録は従来通りレジスタッフが行っています。また、通常の有人レジも併設しており、高齢者などセルフレジの操作に不安のある方でも安心です。
千葉県の食料品スーパー「せんどう」では、人手不足の問題を抱えていました。それが原因となり、精算業務でのミスや従業員のストレス増大などにもつながっていたようです。その解決策として導入されたのがセミセルフレジ。利用客との金銭授受の機会をなくすことで、レジ業務を簡略化し、人手不足を解消しました。
スーパーは、レジ周辺の行列や多様化する決済方法への対応、新型コロナの影響による衛生面などさまざまな課題を抱えています。その解決方法として、多くの店舗で導入が進められているのがセルフレジです。導入のメリットはもちろん、注意点も理解した上で設置を検討してみてはいかがでしょうか。
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